SNSはありとあらゆる分野に浸透し、
それにともなって多くの「インフルエンサー」と言われる人たちが登場してきました。
インフルエンサーは、文字通り「影響力」を持った存在として
私たちの考え方や行動を左右しています。
最近では「インフルエンサーマーケティング」という言葉も一般化し、
彼らの存在は、私たちの生活と切っても切れないものになっています。
あなたもインフルエンサーおすすめの商品を購入した経験があるかもしれません。
しかし彼らの影響力は、必ずしも良い結果ばかりを生むことはないようです。
「TITAN(チタン)」騒動
去る2021年6月、暗号資産(仮想通貨)の「TITAN(チタン)」が、
歴史的な大暴落をしたことで大きな話題になりました。
TITAN(チタン) とは、知名度が低く、時価総額が安い、いわゆる「草コイン」の一種です。
知名度の低さは、将来的には注目度が高くなる可能性があることを意味します。
注目されていない草コインを低価格で大量に購入し、価格が上昇したタイミングで一気に売却すれば、
その利益の大きさは計り知れないものがあります。
そして、この草コイン TITAN(チタン) が話題になったのは
ある有名なブロガーが自身の Twitter で取り上げたことによります。
「ブロックチェーンで運用するだけで、1年で159倍になる世界」
「ブラックホールのごとく、すべてを吸い尽くす勢い」
「ガチの錬金術なのか……」
まさに「煽り(あおり)」と言ってもいいツイートです。
また、この Twitter の内容を受けて、別の若手ブロガーが
「余っているUSDTを、こちらに全ベットしていきます」
「資本主義の『転換点』なのかな、とも思ったりします」
と興奮気味の反応を返しました。
しかし、有名ブロガーがツイートした当日深夜から TITAN (チタン) の暴落が始まり、
翌日にはおよそ、42億分の1である0.000000015109ドルという最安値を付ける事態になりました。
大勢の「億り人」を生み出すかに見えた TITAN(チタン) は、
わずか1日で、ほとんど価値が無くなってしまいました。
TITAN (チタン) 大暴落の背景は
私は仕事でもプライベートでも、暗号資産(仮想通貨) の取引をしたことがありません。
ですから、アルトコイン (ビットコイン以外のコインの総称) とは言え、
TITAN (チタン) の価値が42億分の1になるという意味が理解できません。
もっとも暗号資産 (仮想通貨) に関しては、
株式市場で用いる「ストップ高・ストップ安」のような値幅制限のシステムが存在しないそうです。
24時間取引され続けているので、少し目を離した間に大幅な値動きをするのは当然で、
ましてや寝ている間に大暴落するというのは決して珍しいことではないでしょう。
つまり「草コイン」と呼ばれるようなマイナーな暗号資産(仮想通貨) は
ハイリスク、ハイリターンを前提に扱うべきだということです。
「インフルエンサー」に責任はあるか
ただ、TITAN(チタン) 暴落の実害を被った人にしてみれば、
下落幅が42億分の1というのはあまりにもひどい話で、
最初に「煽りツイート」をしたインフルエンサーの責任を問いたくなる気持ちは理解できます。
しかし、ここでは冷静になる必要があります。
投資はあくまで自己責任の世界です。
最終的な判断を下すのは、取引をする本人以外にはあり得ません。
しかも今回の TITAN(チタン) に関して、
問題のブロガーは、Twitter やブログの読者に、購入を強く薦めているわけでもありません。
暗号資産 (仮想通貨) の値動きの激しさや特殊な性質について、個人的見解 (感想) を述べただけのことです。
インフルエンサーが話題にしているというだけの理由で、
自らの頭でしっかり考えることもなく、その情報に飛びついてしまってもいいのでしょうか。
今回の TITAN (チタン) 暴落については、
金融庁の「証券取引等監視委員会」に通報した人もいるでしょう。
しかし、渦中のインフルエンサーが何らかの形で罰則を適用されたという話は聞いたことがありません。
インターネット上に、少しばかり刺激的なツイートを流したくらいでは、
大した責任は問われないということです。
あなたが講じるべき対策は
インフルエンサーが発信する情報に踊らされないために、
あなたにできることは何でしょうか。
それは「ネットリテラシーを身に付ける」ということに尽きます。
先ほど、TITAN(チタン) を Twitter で話題にした有名ブロガーに対し、
「余っているUSDTを、こちらに全ベットしていきます」
と反応した、若手ブロガーのことを書きました。
その方も過去に興味深いツイートをしています。
いわく、
「ローンを組んで家を買ったら、その家を貸し出して家賃収入を得て、物価の安い海外で暮らした方が良い」
という内容でした。
もしあなたがこのツイートを読んで
「なるほど、その手があったか」
と感心しているなら、非常に危険です。
私がこのツイートから読み取れるのは、
このインフルエンサーの方は、少なくとも日本という国で、
ローンを組んで不動産を購入した経験がないだろうということです。
自らの居住用と賃貸の用途では、当然ローン契約の内容が異なります。
貸し出すのが目的であれば、投資ローンに切り替える必要があり、
住宅ローンのまま家屋を賃貸すれば、金融機関から一括返済を求められることになります。
このように常識的な社会経験に基づいて考えることで、
インフルエンサーのレベルを知ることができ、怪しい発信を鵜呑みにすることはありません。
さらにインターネットの情報を加えれば、あなたの身を守るには十分です。
あなたが自分の人生から学んだ経験と、インターネットからの情報。
この2つを駆使してネットリテラシーを身に付ければ、
情報の質を見極め、正しい判断ができるようになります。
まとめ
今回の記事ではインフルエンサーの「悪影響」と
それを回避するためのポイントを書きました。
インターネットの情報は、それがどれほど魅力的なものであっても、
まず発信者を疑うところから始める必要があります。
ただ「相手を疑ってかかる」という態度は日本人の美徳に反するので、
抵抗を感じるかもしれません。
しかし、金銭的なリスクを伴う決断をしなければいけないとき、
やはり慎重な判断が求められます。
あなただけでなく、家族の将来にも影響が大きいからです。
あなた自身が、自分の経験から学び続けること。
そしてインターネットで検索を重ねること。
そうすれば怪しい情報に踊らされることもなくなるでしょう。