子供たちの「将来なりたい職業」の上位にランクされ、芸能人も次々に参入。
その一方で「迷惑系」と呼ばれるような人たちがニュースをにぎわせるようになったYouTube。
ひょっとしたらあなたもYouTubeを視聴するだけでなく、
YouTuberデビューを夢見ているかもしれません。
しかし今後、YouTubeで成功を収めるのは「茨 (いばら) の道」です。
YouTube 今後の展望
市場としてのYouTubeは今後も拡大し、伸び続けるプラットフォームであることは間違いありません。
それは以下の統計からも明らかです。
- YouTubeの年間収益は2011年が13億ドル、2020年は197億ドルとなり、この10年で15倍の伸び
- YouTubeのユーザー数は、2012年に8億人、2020年は23億人
日本では世界4位の6,000万人が利用 - YouTubePremiumの定期購入者は2020年は3,000万人
- YouTubeへのコンテンツのアップロードは毎分500時間
→ businessofapps “ YouTube Revenue and Usage Statistics (2022 ) ”
このように、YouTubeは年を追うごとに、私たちの生活に浸透していることがわかります。
ほとんどの動画は視聴されない
YouTubeは私たちの身近なプラットフォームになり、より親しみを持てる存在になりました。
YouTuberを目指す人たちにしてみれば、動画をアップさえすれば、
多くの人たちに見てもらえると考えてしまうかもしれません。
しかし現実は厳しいものがあります。
かなりショッキングな数字ですが、紹介します。
YouTubeにアップロードされた中で、88.4%の動画は1,000回以下しか再生されません。
逆に再生回数の多くを占めるのは、本当に限られた、ごく少数の動画のみです。
2019年のデータでは、全体のわずか0.77%の動画が、82.83%の再生回数を記録しました。
評価の高い、安定感のあるスターYouTuberが再生回数を稼ぐ一方で、
新規参入者はほとんど無視され続けています。
YouTuberの間にも、深刻な「格差」が生まれていて、
その状況は今後も変わることはないように思われます。
このデータを提供しているのは「Pex」という企業です。
彼らは自社のページで、
「無名から有名になるハードルをクリアするのは簡単なことではない」
とマイナーなYouTuberを痛烈に皮肉っています。
「YouTubeパートナープログラム」の審査基準の改定
後発組のYouTuberが厳しい状況にあるのは理解していただけたと思います。
そこへさらに追い打ちをかけたのが、「YouTubeパートナープログラム」の審査基準の改定です。
「YouTubeパートナープログラム」とは、YouTubeに投稿した動画を収益化するために必要な手続きです。
従来は、YouTubeアフィリエイト(アドセンス)に参加するためには、
チャンネルの動画再生回数が10,000回を超えることが条件となっていました。
ところが2018年2月20日から、「YouTubeパートナープログラム」への参加条件が厳しくなりました。
YouTube パートナー プログラムへの申し込みの資格要件は、YouTube の利用状況が良好で、
引用元:YouTube パートナープログラム「参加要件」
過去 12 か月間の総再生時間が 4,000 時間以上、
かつチャンネル登録者数が1,000 人以上であることです。
また、YouTube の収益化ポリシーを遵守していること、
YouTube パートナー プログラムをご利用いただける国や地域に居住していること、
リンクされているAdSense アカウントを持っていることが求められます。
つまり、
- 改定前 … 総視聴回数10,000回以上
- 改定後 … 12ヶ月間の総再生時間4,000時間以上 & チャンネル登録者1,000人以上
ということです。
この改定後の新しい基準をクリアしない限り、どれだけ動画をアップロードしても収入は得られません。
そもそもパートナープログラムの審査すら始まらないということです。
YouTuberとして生き残る道はあるか
現在は、スマートフォンで高画質な動画を撮影できる時代です。
その動画の編集も、高機能の無料ソフトを使えば簡単にできます。
ただし、新しいパートナープログラムの審査を突破することは非常に厳しい。
すなわちYouTubeは参入しやすいものの、収益化が難しいプラットフォームになったと言えます。
そのような状況で、新規参入者がYouTuberとして生き残っていけるのでしょうか。
ここでは2つの条件を提示してみたいと思います。
親しみやすく、個性的なキャラクター設定
新参者が活路を見出すためには、視聴者の方から絶対に嫌われてはいけません。
「炎上狙い」や「迷惑系」は、もはや時代錯誤でしかありません。
親しみやすい雰囲気を持ちながらも、しっかりと意見を主張する。
あるいは、誰もマネできない個性的なルックスを持っている。
そういったキャラクター設定をするべきです。
視聴者は、どこにでもいる平凡な人を見たいわけではないからです。
オリジナル動画の作成
現在のYouTubeでは、
- ラジオ音源の切り抜き動画
- 文字スクロール動画
- スライドショー動画
などの、他者のコンテンツに細工をした動画は使えなくなっています。
つまりYouTubeにおいても、Webサイトやブログの記事と同様に
独自性 (オリジナリティ) が求められる時代になりました。
アイデアを掘り起こし、撮影した動画を面白くなるように編集する。
そしてその作業を、毎日毎日続ける。
最初は難しくても、量をこなすことで慣れていくしかありません。
そうやって、見る人がすぐにあなたの動画だとわかる「独自性」が生まれます。
そして、そのような動画は視聴者からもYouTube (Google) からも高い評価を得られます。
コンテンツにあなたなりの「色」が必要とされることは、
YouTubeの動画でも、インターネット上の記事でも、何ら変わるところはありません。
まとめ
動画を作成するために必要とされるエネルギーとリターン (収益) 。
現在のYouTubeのシステムでは、その「コストパフォーマンス」のバランスが取れません。
注ぎ込む情熱に対する見返りが少なすぎます。
それでも収益を度外視してYouTuberになりたい、という方もおられるかもしれません。
そのような方がYouTuberを目指す理由は、おおむね以下の3つではないでしょうか。
- 視聴者に見てもらいたいテクニックやスキルを持っている (表現欲求)
- そのテクニックやスキルを認めてもらい、感動を共有したい (承認欲求)
- YouTubeの概要欄から、自分のWebサイト・ブログを見てもらいたい (ビジネスの導線)
これらの目的のためであれば、今からでもYouTuberになる意味はあるかもしれません。
日本を代表するYouTuber「HIKAKIN」氏は、
2018年に放送されたNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」の中で、
7分の動画を編集するのに6時間かけていると語りました。
「HIKAKIN」氏が作る動画は、何気ない日常を切り取ったような、
誰もが安心して見ることができるものが大半です。
そんな「普通」の動画ですら、
アイデアを絞り出し、台本を書き、構図やカメラワークを考え、
ファンの方のために時間を取って、徹底的に作りこんでいくのです。
また「HIKAKIN」氏は、YouTuberとしての活動を
「ゴールのないマラソンのようなもの」と表現しました。
毎日動画をアップし、常に新しいことにアンテナを張り続ける生活は
彼ほどの才能に恵まれたクリエイターであっても、苦しくて辛いということです。
もしあなたが「副業」で「顔出しせず」「お小遣い稼ぎ」がしたいと考えているなら、
そんな生半可な気持ちでは、とてもやっていけません。
YouTuberになるのはやめておいた方がいいでしょう。無理です。
YouTubeバブルは、とっくの昔にはじけています。
あなたが思いつくようなアイデアは、必ず他の誰かが先に実践しています。
スライドショーや文字スクロールを使った「紙芝居動画」を大量にアップして
大きな収益を上げることのできた時代も過ぎ去りました。
同じエネルギーを使うなら、ブログやアフィリエイトに心血を注いだ方が
よほど大きな可能性があると言えそうです。